宿泊だけに頼らない。─HOTEL SHE, KYOTOが実践するマルチ収益モデル

公開日

2025.11.21

    ホテルの現場は、普段目にすることのない工夫や試行錯誤であふれています。
    このコーナーでは、注目ホテルの知られざるトークから、ホテル運営のヒントをお届けします!

    今回ご紹介するホテル|HOTEL SHE, KYOTO
    京都九条の街にある、”最果ての旅のオアシス”をコンセプトとするブティックホテル。京都駅から徒歩圏内の立地にあり、全客室にはレコードプレイヤーを設置している他、アイスクリームパーラーも常設。

    今回は、ホテル運営を通して「ライフスタイルの試着」を提案するHOTEL SHE, KYOTOのアシスタントマネージャー籔田さんに、開業の経緯や宿泊者とのコミュニケーション、独自のクリエイティブな取組みについて伺いました。

    インタビュアー:宿泊予約システムCHILLNN 藤田

    九条なら、新しい人の流れやカルチャーを生み出せる

    ──HOTEL SHE, KYOTOはどういった施設ですか?

    ホテル業界全体で見ると、「ライフスタイルホテル」や「ブティックホテル」に分類される施設だと思います。

    HOTEL SHE, KYOTOは2016年にオープンし、2019年に一度リニューアルを行いました。当時は「ライフスタイルホテル」という言葉自体が一般的になりつつあり、ありきたりな印象を持たれるようになっていました。そこで、戦略的にもクリエイティブ的にも個性を際立たせる方向に舵を切ったんです。

    具体的には、客室にレコードプレイヤーを置いたり、ロビーでフリーアイスクリームを提供したりといった施策を取り入れました。
    また、九条という土地に合わせて「最果ての旅のオアシス」というコンセプトを掲げ、単なるライフスタイルホテルではなく、九条の風土や空気感を織り込みながら、旅の疲れを癒せる“京都のオアシス”のようなホテルを目指しています。


    ──なるほど。籔田さんご自身では、九条の土地をどのように捉えていますか?

    話したいことはたくさんあるのですが…。

    九条の街は、京都の中でも「京都らしくない」と言われがちなエリアです。そのため、この場所にホテルをつくることは、ビジネス的な意味でも、人の流れや新しいカルチャーを生み出す上でも、チャンスがあると感じました。そうした背景から、2019年にHOTEL SHE, KYOTOが生まれ変わったという経緯があります。

    ホテルのキービジュアルは、イラストレーターの辰巳菜穂さんに描いていただきました。京都の人にとって北から南に向かって眺める京都タワーを、あえて南から臨む形で描くことで「九条」という街の捉え方を表現していただいてます。風景もホテルの内装と同じくカリフォルニアのロードサイドモーテルをイメージしていますが、空の色合いは実は『枕草子』のニュアンスも包含されています。

    「オアシスをつくる」というのも、九条という土地にあえてフィクショナルな世界を描くような感覚です。日の目をみない土地に光を当てるというより、自分たち自身が光になるような感覚ですね。お客様には、その世界観の中で宿泊という形で身を置き、HOTEL SHE, KYOTOの空気感を楽しんでいただけるような場所づくりを意識しています。


    ──籔田さんが入社されたのはいつ頃だったのですか?

    私が入社したのは2022年12月で、まだコロナ禍が完全に明けておらず、旅行需要が回復途中の時期でした。

    コロナ禍でも来てくださる日本人ゲストの中には、元々HOTEL SHE, KYOTOや弊社代表の龍崎翔子のファンの方も多くいらっしゃったので、観光需要の回復と共にブランドが再成長という意味でホテルとしてまだまだできることがあると感じました。


    多様な「宿泊×◯◯」を仕掛け、宿泊だけでない売上をつくる

    ──HOTEL SHE, KYOTOは、宿泊以外にも物販やイベントにもチャレンジされていますよね。

    そうですね。ホテルは客室数に上限があるため、どうしても宿泊売上には天井があります。そうした点を踏まえると、料飲や物販部門はまだまだ伸びしろのある分野だと感じます。

    特にHOTEL SHE, KYOTOでは、コラボルームやコンセプトルームの施策を継続的に行っており、その取り組みが結果的に物販の売上にもつながっています。既に次の企画も仕込み中なんです。

    客室の数だけ新しい挑戦ができるという考え方は、「宿泊×〇〇」という多様な企画に取り組んできたHOTEL SHE, KYOTOならではの強みだと思います。

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    ──なるほど。地域の事業者ともコラボをされている印象があります。協業は、どのような流れで、アイデアを形にしていくのですか?

    コラボ案件は、まずこちらで「やりたいこと」の大枠を決め、その後に事業者さんへご相談する形が多いです。

    直近の例では、詩人の最果タヒさんとデザイナーの佐々木俊さんによる「詩のホテル」というコンセプトルームを開催しました。ホテル内だけでなく、駅やクリーニング店、銭湯など、九条の街中のさまざまな場所に詩の展示広告を展開しました。

    大変だったのは、展示広告やアメニティ、グッズ制作・販売の際に、企画の趣旨や想いを地域の皆さんにご理解いただくことです。どうしても前例のない挑戦が多く、「またHOTEL SHE, KYOTOが何か変なことをしているな」と思われるところからのスタートでした。
    それでも最終的には、「九条の街を盛り上げたい」という想いをご理解くださり、地域の皆さんが温かく協力してくださったことで、詩のホテルを実現することができました

    ──ちなみに売上の構成比はどのような割合ですか?

    具体的な比率は閑散期と繁忙期で変動しますが、約90%は宿泊の売上です。その他はカフェの料飲部門や物販などが占めています。

    物販ではオリジナルグッズの販売に加え、2週間ごとに定期開催しているイラストレーターや作家さんによる展示やPOP UPでの作品の委託販売も行っております。昨年からこの取り組みを始めたのですが、新たな部門として売上増加につながっており、大変ありがたく感じています。


    スタッフ自らクリエイティブを手掛けるからこそ実現できた、魅力的なグッズや内装

    ──物販にも力を入れているんですね。個性的かつ魅力的なアイテムたちはどのように調達しているのでしょうか?

    実はクリエイティブ制作は、基本的に内製しています。ロゴやキービジュアルなど、キーとなる要素はプロの方に依頼しますが、ホームページは弊社のブランドマネージャーが制作しました。
    また、カフェのメニューやグッズ、内装写真やパネルなども自社で手掛けています。実は、そこにあるクラフトビールの看板も私の手書きなんです。

    現在は、HOTEL SHE,ブランドの、HOTEL SHE, OSAKAとHOTEL SHE, KYOTOの両施設で、デザインやクリエイティブ領域を担当できるメンバーが3名ほど在籍しています。
    そのため、多くの制作物を自分たちで完結できる体制が整っています。コスト面のメリットはもちろんですが、トレンドを自ら掴み、ゲストのニーズを直接感じ取るためにも、非常に意義のある取り組みだと感じています。

    ▼HOTEL SHE,ブランド「BOY MEETS SHE」のグッズはオンライン販売もしている


    ターゲットは狭めない。間口を広めるための工夫

    ──ゲストの傾向を教えてください。

    ゲストの約90%はインバウンドのお客様です。SNS経由で予約される方も多く、特に台湾や韓国向けにはInstagram広告を出稿しており、一定の反響をいただいています。
    年齢層は20代から60代までと幅広く、40代以上の方から「以前からHOTEL SHE, KYOTOを知っていた」と言っていただくことも多いです。

    また、口コミをきっかけに来てくださるお客様も多く、特にアイスクリームやレコードプレイヤーに関するレビューを読んで興味を持たれる方が目立ちます。もちろん、特別な目的がなくても、滞在を通じてファンになってくださる方もたくさんいらっしゃいます。

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    ──ターゲットは戦略的に絞っているのでしょうか?

    はい。広告出稿は経営企画部門と相談しながら行っていますが、年齢層まで完全にコントロールするのは難しいです。京都のホテル市場はまさに群雄割拠で、特定のファン層だけを狙い撃ちするのは現実的ではないと日々感じています。

    HOTEL SHE, KYOTOは、コンセプチュアルでアイコニックな存在であるがゆえに、若者向けのホテルという印象を持たれがちです。しかし私たちとしては、どんな世代・国籍・趣味の方であっても、間口の広い、誰もが気軽に立ち寄れる場所でありたいと考えています。それこそが“オアシス”の在り方だと思っています。

    たとえばレコードは、初めて触れる若い方もいれば、懐かしんでくださる世代の方もいて、幅広い層に楽しんでいただけるコンテンツです。アイスクリームも、嫌いな方はいませんよね。フレーバーによって楽しみ方も変わるため、世代や国籍を問わず受け入れられるコンテンツになっていると感じます。


    一番のターゲットは代表?「やりたいことをやり切る」企画づくり

    ポップアップイベントや展示、内装の雰囲気づくりにおいても、明確なターゲットを設定しているというよりは、「自分たちがやりたいことをやり切る」ことを重視しています。その結果として、「一緒にこの世界観を楽しみたい」と思ってくださる方が集まってくだされば嬉しい、というスタンスです。

    これは私の個人的な見解ですが、HOTEL SHE, KYOTOの一番のターゲットは、代表の龍崎翔子なのではないかと思っています。私たちが新しい企画を提案する際も、「翔子さんがそれを良しと思ってくれるか」が大切な判断軸になっています。

    彼女は20歳のときにHOTEL SHE, KYOTOを立ち上げ、もうすぐ10年が経ちますが、常に考えをアップデートし続けている方です。
    だからこそ、「翔子さんがゴーサインを出してくれる」ということは、HOTEL SHE, KYOTO自体が今も進化し続けている証なのだと実感しています。


    HOTEL SHE, KYOTOの直販戦略

    ──直販予約に強いイメージがあるのですが、特に成果のあった施策はありますか?

    コンセプトルームの予約は直販のみで受けています。そのため、特別な時期には直販予約が分かりやすく伸びます。また、Instagram広告にも力を入れており、広告から公式サイトに遷移して予約される方も一定数いらっしゃいます。

    ただ直販予約に誘導するだけでなく、導線を工夫し、直販ならではのコンテンツも提供しています。例えば銭湯プランや、お祝いニーズに応じたワイン・花束オプションなどです。こうした特別な思いを持って宿泊される方は、直販で予約されるケースが多いです。

    ▼直販限定の銭湯プランの予約ページ


    内部的には、在庫管理がしやすい点もメリットです。CHILLNNではアイテムや朝食追加などのオプションも設定できます。OTAの場合、予約当初からプランとして「朝食付きプラン」を選ぶ必要がありますが、CHILLNNでは通常プランで予約を進めていた方も、途中で朝食を追加できます
    このような特別オプションを用意することで、公式サイトの利便性や管理のしやすさが向上し、直販予約の増加にも役立っています。

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    全スタッフで分析・トライするレベニューマネジメント

    ──料金はどのように決定しているのですか?

    当社(水星)では、大きな方針をボードメンバー(代表・役員)で決定し、予算を確定した上で、前年の実績をもとにベースの料金を設定します。
    その後、HOTEL SHE, KYOTOでは、現場スタッフが日々の料金を変動させる体制をとっています。多い日では、1日に2〜3回価格を変更することもあります。

    ただ、料金設定に明確な正解はありません。値段を下げても予約が入らない日もあれば、「なぜこの価格でこんなに予約が入るのか?」という日もあります。そのため、周辺イベントの開催状況や近隣施設の予約動向を常に把握し、柔軟に対応する必要があります。
    実際には、数多くの試行を重ねるしかない部分が多く、数をこなしても正解が見えないこともあります。それでも反省と考察、そして実行を繰り返しながら取り組んでいます。

    レベニューマネジメントについては、全スタッフが対応できるようにすることを目指しています。月に一度、経営陣とのミーティングで方針を決め、その後の実務を現場スタッフが担当する形をとっています。


    あえて人が介在する導線で会話を生む——チームで磨く“型と余白”のオペレーション

    ──部門が複数ありますが、どのように役割分担をしているのですか?

    HOTEL SHE, KYOTOは、比較的少人数のチームで運営しています。

    私の担当は、ポップアップや展示イベントのロビーキュレーション、SNSでの四コマ漫画制作、広報サポートなどです。他のメンバーはカフェ部門を中心に、在庫管理や新メニューの開発など、内部的な業務も含めてカフェ運営全体を担っています。
    もう一人のスタッフは、主に清掃などの内部管理や教育を担当しています。

    ──マルチプレーヤー揃いですね!教育はどのように行っているのですか?

    基本的なOJT内容は明確に定めており、担当者による教育を通して新人スタッフが独り立ちできるようにしています。特に事務作業やチェックイン案内に関しては、体系的なマニュアルを整備しています。

    ただし、それ以外の“余白”の部分こそ重視しています。
    HOTEL SHE, KYOTOではゲストとスタッフの交流が盛んで、飲食店や観光地のおすすめを尋ねられることも多いです。そうしたコミュニケーションにおいて、回答の深さやバリエーション、フレンドリーに接するトークスキルは非常に重要です。

    また、京都に住んでいるからこそ伝えられることや、HOTEL SHE, KYOTOのコンセプト・理念をお客様にお伝えするためのトレーニングは、私がスタッフと1対1で行っています。

    ──コミュニケーションに関するポジティブなレビューをいくつも拝見しました。これも社内教育によるものですか?

    はい。コミュニケーションは社内全体で大切にしている方針です。ただ、そもそもコミュニケーションに長けた方を採用している会社でもあると感じます。

    ホテルではチェックインの自動化やドリンクバーの設置など、機械で対応できることもあります。しかし、あえて人の手を介すことで、ゲストとの交流を生み出しています。例えば、アイスクリームもバー形式でスタッフがすくって提供することで、カウンター越しにコミュニケーションが生まれます。
    フロント横にレコードプレーヤーとレンタル可能なレコードコレクションを置くのも、単なる装飾ではなく、ゲストとスタッフの会話を促す工夫です。こうした設計の中で、スタッフ一人ひとりがどれだけバリューを発揮できるかを重視し、ホスピタリティ教育を通じてレベルアップを図っています。

    ──業務を効率化するための取り組みについて教えてください。

    実はAIやExcelマクロもかなり活用しています。ほとんどは内部の事務作業やマニュアル作成などの効率化に使っています。

    テクノロジーに頼る部分もありますが、先ほどの話にもあったホスピタリティの力は非常に重要だと感じています。メリハリを意識し、非効率であってもゲスト一人に時間を割くことで、満足度を高めることがスタッフの働く意義にもなりますし、私たちのバリューを高めるための重要な時間だと考えています。


    「ホテル空間を使って何かやってみたい」方に間口が広い組織

    ──メンバーのバックグラウンドも様々かと思いますが、どのような人を採用で受け入れているのですか?

    会社のカルチャーだと思うのですが、水星はホテル出身の人が少なく、様々な業種で培ったスキルをホテルの現場やホテル開発業務で活かしている方が多いです。

    実際、私も新卒で金融機関に勤めた後、クリエイティブ系の印刷会社に転職しました。その後、コロナ禍でやりたいことができなくなる中、京都のベンチャー企業で自由に働ける会社を探していました。正直、ホテルには全く興味がなかったのですが、水星がホテルを通じて京都で新たなムーブメントを起こそうとしていることに非常に興味を持ち、入社に至りました。
    もしかすると、「ホテルで働きたい」というより、「ホテルという空間を使って何かやってみたい」という方にも間口が広いのかもしれません。


    ──採用といえば、籔田さんの四コマ漫画経由で入社が決まった方もいたとか。

    はい、そうなんです。実は私がXに投稿している四コマ漫画が、採用につながりました

    ただ、もともとはゲストにスタッフのキャラクターを知って興味を持ってもらいたい、という想いから始めたものです。スタッフの性格や取り組みを知ってもらいたいと考えたとき、SNSの写真や動画だけでは伝えきれない部分がありました。そのため、昨年から四コマ漫画を始めたところ、ご好評をいただくことが多くとても嬉しいです。

    ──スタッフ定着のための工夫はされていますか?

    個人差もあり難しいテーマですが、私は業務の中で好きなことを見つけ、得意分野を伸ばせる環境を提供したいと日頃から思っています。

    例えば私の場合、フロントオペレーションやレベニューマネジメント、マニュアル・職場環境の整備を行いながらポップアップ企画などのプラスαの業務でバリューを発揮できる機会をいただいています。得意なことを業務に紐づけられると社内評価も上がり、他の分野でも挑戦の機会を得られます。場合によっては事業部の垣根を越えて仕事を任されることもあります。

    チャンスがあれば自分のやりたい仕事をさせてもらえることは、水星の素敵な点だと思います。新しく入社された人が水星に定着しやすい理由は、そこなのかなと思いますね。 

    ──今日はありがとうございました!

    宿泊だけにとどまらず、地域やカルチャーを巻き込みながら独自の世界観を発信するHOTEL SHE, KYOTO。
    こうした柔軟な発想と自社で完結するクリエイティブ力は、宿泊施設のブランド価値を高め、直販予約の強化にもつながっています。
    自施設らしい体験価値をどう作るか――そのヒントが、このホテルの取り組みにあります。

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